皆さんは茶碗の作り方はご存じでしょうか?
粘土をこねて形作り、窯で焼きあげて完成です。
同じように、原子レベルで調整した原料から、形作り、窯で焼いたものはファインセラミックスと呼ばれ、半導体や自動車、情報通信、産業機械、医療などさまざまな分野で活躍しています。
まさか、茶碗として使っていたものがこんなにも用途が広がるなんて、思いもしなかったのではないでしょうか?
今回は、独断と偏見で意外性を感じるセラミックスを3つご紹介します。
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私は、大学で無機化学を学んだ後、大手セラミックスメーカーに就職しました。
その後、ベンチャーに転職して、さらなるセラミックスの発展を目指しています。
チタン酸バリウム(BaTiO3):電気を蓄える
チタン酸バリウムBaTiO3はBaOとTiO2が1:1の比率で組み合わさった複合酸化物です。酸化チタンTiO2の誘電率(電気を蓄える力)が100以下であるのに対して、チタン酸バリウムBaTiO3の誘電率は10000と驚きの特性を示します。
この極めて高い誘電率を持つことから、積層セラミックコンデンサとしてあらゆる電子回路に使われています。
「従来の100倍以上の性能」となると、とてもワクワクしますね。
アルミン酸ストロンチウム(SrAl2O4):光を吸収して暗闇で光る
アルミン酸ストロンチウムSrAl2O4はユーロピウムEuなどの希土類元素を添加することで蓄光性(光を吸収して暗闇で光る性質)を示します。
この放射性物質を含まず、従来の硫化亜鉛系のものよりも10倍明るく、10倍長く光る物質の発見により、災害時の避難標識として使われています。
また、「普段は目立たなくても周りが暗いとき目立つ」のはかっこいいですよね。
興味のある方は、ぜひ蓄光材を使ったハンドメイド作品に挑戦した記事も参考にしてみてください。
YBCO(YBa2Cu3O7):超電導になり電気抵抗が0になる
YBCO(YBa2Cu3O7)は、銅系複合酸化物超電導体の一種であり、90K(-183℃)で超電導転移(電気抵抗が0になる)を起こします。液体窒素の沸点77K(-196℃)を超える転移温度であり、それまでの最高値はNb3Geの23.2K(-250℃)であったことから、YBCOは高温超電導体とも呼ばれています。
電気抵抗が0になると、大電流を流してもエネルギーロスがなく、鉄心電磁石をはるかに上回る強力な磁石がつくれます(超電導磁石)。リニアモーターカーにも応用が期待されますが、YBCOの線材を作るのが難しいことから、現在は液体ヘリウム4K(−269℃)とNbTiが採用されているようです。
まとめ
今回は、独断と偏見で意外性を感じるセラミックスを3つ紹介しました。
今後、宇宙や海底などへの進出など人類の発展にもますますセラミックス材料が期待されます。
材料の研究といえば地味な調合作業や顕微鏡での観察などから始まりますが、世の中を大きく変えることができると考えるととてもワクワクしますね。
今回は紹介しきれませんでしたが、他にも、セラミックス系の材料研究で成功した日本人はたくさんいます。気になる方は、ぜひ材料の研究で成功した有名人について書かれた記事もご参考ください。
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